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抱き寄せる朝「義明さん幸子さん」22

高齢者婚活パーティーで出会って見事マッチングを果たした、
鈴木義明さん(仮名・東京都)60代の男性の方と、高橋幸子さん(仮名・神奈川県)50代の女性の方。

義明「昨日の埋め合わせをさせてもらえるチャンスをくれないかなと」

幸子「ど、どう言う意味・・・?」

そう言うと、義明さんは幸子さんをグッと、力強く抱き寄せました。

義明「こう言う意味、なんだけど」

幸子「義明さん・・・・」

義明「もちろん、幸子さんが良ければ、だけど。」

幸子さんは驚きと緊張でしばらく黙ったままでした。
男性に抱きしめられることなんてどのくらいぶりだか分かりません。

しばしの沈黙を破り、

義明「いいかな?幸子さん」

幸子「・・・・えっと。あの、でも朝だし・・・」

義明「うん」

幸子「明るいし・・・」

義明「うん」

幸子「朝食に行かないと・・・」

義明「うん」

幸子「朝風呂にも・・・」

そこまで言ったところで、幸子さんの声は義明さんによって塞がれました。

そして、明るい日差しがカーテンの隙間から差し込み、
朝支度の宿泊客の声と、忙しそうにパタパタと歩く仲居さんの足音が
扉を隔ててかすかに聞こえる中、

二人はそのまま静かに倒れこみました。

お互い経験の少ない者同士、きっとたどたどしいところはあったかもしれませんが、
自信の無さは相手も同じだと言う安心感もあり、言いようのない幸福感を得たような気分でした。

そして、その幸福感に包まれたあと・・・。

そのままウトウトしてしまい、気が付いた時には、

幸子「いけない!チェックアウトの時間だわ!」

すでに時刻は午前10時を迎え、慌てて飛び起きた幸子さんは義明さんを起こし、
急いで身支度をしてバタバタとせわしなく旅館を後にしたのでした。


<続く>


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